『冤罪被害者』のブログ 

冤罪被害者の闘いを綴る

005でっち上げの証拠①

〔疑わしきは罰せず〕

 開示されたAの供述調書を目の当たりにし愕然とした。

 自分が無実であることは、自分が一番知っている。Aが虚偽申告していることも明らかである。

 

 しかし、

   ①6月まで10回以上被害に遭った

   ②9月まで20回程度被害に遭った

   ③6月下旬には最寄り駅で後を付けられた

 というA供述が虚偽であることを裏付ける証拠がなければ、日本の裁判官は「被害者が嘘をつくはずがない」との予断と偏見から「有罪」であると即断する。

 

 本来、刑事司法の鉄則は、「有罪立証の責任は検察官が負う」と刑訴法で定められている。

 被告人に自分の無実を立証する責任はない。

 検察官が、犯罪事実の存在を「合理的な疑いを容れない程度」まで立証できなければ、裁判官は「無罪判決」を下さなければならない。

 これが、いわゆる「疑わしき〔犯罪事実の証明に合理的な疑いが残される場合〕は罰せず」の原則だ。

 

 いずれにせよ、私は、上記①ないし③を弾劾できる証拠収集に尽力しなければならなかった。

 日本の刑事司法下では、被告人が無罪を証明できないと、「有罪」とされてしまうのだ。

 

〔異例の保釈決定〕

 2018年12月18日、初公判が開かれた。

 当然ながら、罪状認否で否認した。

 身体拘束が続いたままの否認のため、今後いつまで拘留が続くか不安であった。すでに逮捕から3か月もの月日が経過していた。

 

 しかし、たくさんの支援者に法廷に来て戴いた。心強かった。

 長期間の裁判を闘う上で、支援者の存在は本当にありがたい。

 

 2018年12月21日、奇跡が起こった。

 裁判官が、第1回公判を終えて、保釈決定を下したのだ。

 刑事事件で被害者が存在している場合、最低でも被害者の証人尋問が終わるまで保釈はされにくいと聞いていた。

 

 保釈されない事由は、被告人が「罪証隠滅」を計ること。

 被告人が、証人尋問までに被害者に接触し、自分に有利な証言をさせることを企てる可能性があるというのだ。

 日本の刑事司法では、あり得ないロジックがまかり通っているのである。

 

 私の場合、すでに次の公判期日が2月に決定されていた。
 長期間の拘留は覚悟していた。

 

 そのような中、私は3か月ぶりに拘束が解かれたのだ。

 と同時に、本当の長い闘いが始まった。

 

〔証拠開示請求〕

 2018年11月下旬に、証拠関連カード記載の「証拠」は入手した。

 しかし、この「証拠」は、検察官が有罪を立証するために、裁判所に提出する予定のものである。

 これらは、私の無実を示す証拠にはなり得ない。

 

 そこで、弁護人が検察官に追加の証拠開示請求を行った。

 豊富に培った弁護活動の経験から、まだ弁護側に開示されていない証拠をリストアップし、検察官に請求したのだ。

 

 信じられない話であるが、捜査機関は収集したすべての証拠を開示しない。

 言い換えれば、「有罪」を示す積極証拠は開示するが、無実を示す消極証拠は開示しないのが通例である。

 日本の刑事司法のシステムでは、捜査機関は、不都合な証拠を隠蔽することができるのだ。

 被告人は、不利な「証拠」の中から、無実を示す証拠を探し出さなければならないのだ。

 まさに『悪魔の証明』である。

 この現状を以て、世界に「日本の司法制度は、公正中立である」と発信した法務省検察庁の見識は疑わざるを得ない。

 

 冤罪事件の再審請求事案では、のちに被告人の無実を示す証拠が開示されることがある。

 湖東記念病院(滋賀県東近江市)の再審公判の公判前整理手続きで「患者の死因は自然死である」旨の捜査報告書が開示された。

 看護師が、殺人罪で12年も服役した後のことである。

 捜査機関は、この事件が「殺人」事件ではない可能性があることを、専門家の意見をもとに初期捜査の段階で認知していたのだ。

 

 しかし、捜査機関は、それらを隠蔽し公判を維持した。

 裁判官らは、それに追随し「有罪判決」を下してしまった。10名程度の裁判官が関わったが、誤判を繰り返したのだ。

 捜査機関も裁判官も責任は問われない。国家賠償請求の末、国家の責任を認めるのも、裁判所なのだから。

 

 この事件の場合、幸いにも大阪高等裁判所第2刑事部の裁判官(後藤眞理子裁判長)らによって、再審許可が下された。

  弁護側が、再審請求段階で独自に収集した「自然死の可能性がある」旨の医師の意見書が決め手であった。

 捜査段階で、「自然死」を示す報告書の存在が明かされていれば、無実である看護師は、12年間もの服役を強いられなかったであろう。

 もっと早期に無罪判決が下されていたはずだ。

 

 このように、証拠開示を取り上げるだけでも、日本の刑事司法において「公正な裁判が行われている」とは言い難いことが分かる。

 

 カルロス・ゴーン氏への反論として、法務省や捜査機関が世界に発信した「日本の司法制度は、基本的人権に配慮しており、公正中立なものであるである」という旨の声明は、何ら説得力がないものである。

 

〔無実を示す証拠〕

 2019年1月。

 私の保釈が決定し、弁護人と第2回公判に向けて、準備を始めた。

 

 開示された「証拠」から、私の無実を示す証拠収集を始めた。特に、有効な証拠になるであろうと思われたのが、

   ・Aの供述調書

   ・AのLINEの履歴

   ・前記③の事件の防犯カメラ映像

 であった。

 

 Aの「被害」に関する供述調書と、LINE履歴や防犯カメラ映像などの客観的事実とが、悉く整合しないことが明らかになってきたのである。

 

 前掲「004でっち上げ」で記した「別人の画像」と併せれば、私が無実であることを強く裁判所に訴えることができるかもしれない。

 

 弁護人とともに、裁判所にAの「虚偽申告」である旨を訴えるため、本格的な準備がはじまった。

 

 無実を示す証拠精査のはじまりである。

 

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