006でっち上げの証拠②
2019年1月。
弁護団とともに、私の無実を示す証拠の精査をはじめた。
第2回公判は、2月中旬に設定されている。
時間はなかった。
〔Aが通学で乗る電車〕
Aの供述調書には、要旨、①「通学でα電車の先頭車両を利用し被害に遭ったこと」、②「2018年6月までに10回以上被害に遭ったこと」、③「同年9月までに20回程度被害に遭ったこと」、④「同年6月下旬に帰宅途中に後を付けられたこと」が、記載されていた。
又、どうやらA供述によると、「いつも通学でα電車を利用し、迷惑行為(痴漢)を10回以上受けた」上に、「6月下旬には、帰宅途中に後を付けられた」から、警察に被害申告をしたということらしい。
ところで、私は、確かにα電車を利用することが多い。しかしβ電車を利用することもある。いつも気分でプラットホームへ降りる階段を選んでいたので、先頭車両以外も利用することがある。
このことは、私の行動確認を行った捜査報告書にも明記されている。
つまり、私とAは、α電車の先頭車両において同乗する機会は、少ないはずなのである。
私は、取り調べ段階で、Aの写真を見せられ、「この人物を知らないか」と担当刑事に問われていた。当然、特段記憶にない人物であったので、「知りません」と答えていた。
いま振り返れば、当然の話である。
そして、あまりにも記憶になかったので、「証拠」を精査する上で、AのLINE履歴に着眼しはじめた。
「もしかしたらAがα電車に乗っていないことが裏付けられるかもしれない」という期待が生じていたのである。
〔虚偽申告の裏付け〕
α電車に乗っていない
2018年5月以降のAのLINE履歴を弁護人とともに精査した。
驚くべきことに、やはりAはいつもα電車に乗車しているわけではなかったのだ。
例えば、ある日は、Aがα電車に乗る時間帯以前にすでに学校に到着していることを示す遣り取りがあった。次の日も、又、その次の日も同様だった。
そのような日が続くのだろうか。
一日一日、α電車の時刻表とAの通学時間が分かるLINE履歴とを突き合わせながら、根気強く精査していった。
その結果を弁護人とともにカレンダーにまとめていった。
そうすると、結局のところ、「Aはα電車に半分以上の日で乗っていないこと」が分かった。
さらに、α電車で同乗する機会は、私の出勤履歴などを併せて考えると、多く見積もって6日であることまで判明した。
この6日には、事実に争いがある6月11日事件及び6月13日事件が含まれているから、Aが私から被害に遭う可能性がある日は、実質的には多く見積もって4日しか存在しないと言ってもよいだろう。
いずれにせよ、Aの「いつもα電車に乗っていた」、「6月までに10回以上被害に遭った」旨の供述は、客観的な証拠であるLINE履歴と合致しないのである。
客観的事実と矛盾する供述には、信用性は認められない。
「証拠」精査した結果、A供述が虚偽であることが判明したのだ。
Aの自己矛盾供述
Aは被害申告した際、A証言を信用した警察官から「電車を早くする」旨を助言され、「2018年6月下旬以降は、α電車よりも早い電車を利用した」旨を供述していた。
そうすると、「6月まで10回以上被害に遭った」という被害回数が、「9月まで20回程度被害に遭った」という被害回数に増えることはあり得ない。
しかし、Aは、私が9月事件で再逮捕されたあとの捜査段階で、検察官に「9月まで20程度被害に遭った」と明言していたのである。
つまり、Aの供述には、自己矛盾が生じているのである。
検察官に対し、捜査段階で客観的に起こり得ない「被害」を供述していたのである。
驚くべきことに、捜査担当検察官は、このAの自己矛盾を看過してしまった。
検察官は、「有罪」立証のため、不利な供述を録取しないというのが通例だ。矛盾する供述があれば、「有罪」立証が阻害される要因となりかねないからだ。
供述調書を録取する際に、Aを正していないということは、検察官はこのAの自己矛盾を見逃してしまったのである。
検察という組織が真に正義であるならば、この矛盾に気付いて然るべきであるし、徹底的に補充捜査がなされるべきであったのだ。
(気付いたところで、A供述を辻褄が合うように訂正させ、決して後戻りをしないと思われるが)
、、、。思うところは多々ある。
しかし、取り敢えずは、Aの供述に何ら信用性がないことが明白になった。
「証拠」の精査に集中するしかない。
後を付けられたは虚偽
Aは、「帰宅途中に後を付けられた」から「警察に被害申告をした」と供述していた。
これについても、私は、まったく心当たりはない。
恥ずかしい話であるが、職場からの帰宅途中は疲れ切っている。仮に、そのような悪事を働こうとしても、体力すらない残っていないのである。
早く帰宅して、食事を済ませたいし、風呂で疲れをとりたい。やり残した仕事も残っている。
ちょうど検察官から当日の駅の改札の防犯カメラ映像が開示されていた。
これを見て、弁護団とともに愕然とした。
Aが私の後方を携帯電話で通話しながら歩いている様子が映っていたのである。「私に後を付けられた」と言っているAが、私の後方を歩いていたのである。
Aの母親の供述調書も開示されていた。
母親は、Aから「犯人が自分の後ろにいる」と言って、1回目の電話がかかってきたという。
Aの1回目の通話記録の時間と防犯カメラ時間が合致している。危険を察知した母親は、「犯人を先行かせなさいと助言した」旨を迫真性を持って供述している。
母親の記憶違いであることも考え難い。
この後、Aは母親に「まじで付いてきている。まじで。ちょっと待って。ちょっと待って。」という2回目の電話もかけていた。
私の後を付けながら、そのような電話を母親にしたのだろうか。
証人尋問で明らかにしていく必要がある。
しかし、この事実を「虚偽申告」以外の方法で、どうやって合理的に説明できるだろうか。
私や弁護団の中で、Aへの疑念が確信に変わっていった。
前掲「004でっち上げ」で記した「別人」の写真と併せれば、Aの自作自演を相当強く疑わせる事情であった。
〔被害申告の不自然・不合理〕
翌日、Aの母親は、この事件を契機に警察への被害申告を決めた。
Aが「迷惑行為を受け続けた上に、帰宅途中に後を付けられた」と訴えるのであるから、ある意味当然なのかもしれない。
しかし、Aは相当警察への被害申告を拒んでいたようだ。
一番「被害」を捜査機関に訴えるはずの人物であるのにも関わらず。
被害申告の当日、Aは最初警察に行かなかった。
家で寝ていたようだ。
A以外の他の家族は、皆、警察に行ったそうだが。
結局、警察官がその日にAから事情を聴くことになり、Aは被害申告をした。
私は、Aによって、客観的状況に合致しない「被害」を申告されたのだ。
6月13日事件で撮影した「証拠」動画と、友人が撮影した「証拠」の写真を、Aは警察に提出した。
2018年6月30日の出来事であった。
すでに「証拠」撮影から2週間経過していた。
「証拠」撮影後、すぐに被害申告していないことも不合理であった。
この事件の全貌が見えてきた。
Aの証人尋問まで、あと数週間となっていた。
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