『冤罪被害者』のブログ 

冤罪被害者の闘いを綴る

015被告人質問

 2019年3月。

 被告人質問の公判期日となった。

 

〔被害申告の虚偽〕

 ①被害頻度

 弁:被害頻度について確認します。

  :Aは「α電車の先頭車両に乗っていた」と証言しましたよね?

 私:はい。

 弁:Aは「α電車の先頭車両で9月まで20回程度痴漢被害に遭った」と証言していますよね?

 私:身に覚えがないことです。

  :そもそも回数自体あり得ないことです。

 弁:Aは、被害に遭っていない日、α電車に乗っていない日を証言しましたね?

  :何か作成しましたか?

 私:カレンダーにまとめました。

 弁:どのように作成したのですか?

 敢えて裁判官の前でカレンダー作成を再現した。

 AのLINE履歴、職場の出勤時間記録、電車の時刻表など、客観的資料を確認しながら、丁寧に作業をした。

 

 弁:分かったことはありますか?

 私:Aがα電車に乗っていないことが多くことです。

  :そして同乗する可能性がある日は「4日」しか存在しないことです。

 弁:日は指摘できますか?

 私:5月10日、14日、22日、6月4日です。

 弁:すると「Aが9月まで20回程度被害に遭うこと」は可能ですか?

 私:不可能です。

 弁:「6月までに10回程度被害に遭った」という警察への被害申告はどうですか?

 私:客観的に不可能なので虚偽だと思います。

 検察官はこのカレンダーの信用性について疑義を述べなかった。

 決して弁護団が恣意的に作成したものではない。

 

 ②6月29日事件の虚偽

 弁:6月29日事件について確認します。

  :Aは「あとを付けられた」と言っていますが?

 私:心当たりがありません。

 弁:どちらが先に改札を出たのですか?

 私:先に私が改札を通過しました。

 弁:防犯カメラに映っていましたか?

 私:Aが私の後方を携帯電話で通話しながら歩いていました。

  Aは、私の後方を歩きながら、母親に2回にわたって「後を付けられている」旨を電話をしている。

 母親の供述調書や通話履歴を示しながら、プレゼンテーションした。

 

 ③被害申告の経緯

 弁:6月29日事件の翌日にAの母親が被害申告をしたということでしたよね?

 私:本人が知らない間に驚いた母親が警察に行ったようです。

 弁:Aは何と証言していましたか?

 私:「警察に行くこと自体知らなかった」、「自分は寝ていた」と言っていました。

  Aの寝ていたという発言には傍聴人も驚いたようである。

 被害申告自体「Aの意思に反するものである」可能性が高い旨を訴えた。

 

〔関係証拠について〕

 ④6月13日事件の動画

 弁:疑問に思うことはありますか?

 私:Aと警察官で行った犯行再現が気になります。

 弁:具体的には?

 私:犯人役の警察官の手が、Aの陰部に届いていない点です。

  私の手はドア横手すり付近にある。

 Aはドアに正対している。

 その位置関係では、私の右手はAの陰部に届かないのである。

 警察の再現自体が、Aのいう「犯行」態様では、犯行が物理的に不可能であることを物語っている。

 しかるに、Aは「犯人が後方から陰部に手を回すようにして触ってきた」と証言しているのである。

 

 弁:Aの陰部に右手が接近しているように映っているのはどうしてですか?

 私:Aが体を捻じったのだと思います。

 弁:具体的に説明できますか?

  動画の静止画をプリントアウトしたものに補助線を入れた。

 撮影開始時にAの体はドアに正対している。

 しかし、撮影途中でAの体は右手の方向に正対しているのだ。

 これらを具体化するために静止画に作図した。

 

 弁:そうすると「Aの体が被告の手に正対した状態になった」ということですか? 

 私:はい。

  念のため、私と弁護人とで法廷でも再現を行った。

 裁判官に視覚で理解を促すためである。

 

 弁:この動画はどのような目的で撮影されたと思いますか?

 私:Aが母親や友人に証拠を催促され撮影したものだと思います。

 弁:具体的に証拠は示せますか?

  Aと友人のLINE履歴を示した。

 Aは友人に「動画〔証拠〕ないんかよ」と言われていた。

 明らかに友人に催促されている証拠だ。

 母親からは「証拠をとりなさい」と言われていたことは、Aの供述調書に記載されている。

 

 弁:動画を見るとAはドア側にいますね?

  :先に電車に乗り込んだのはどちらですか?

 私:私です。

  :ドア側にいるAがあとから乗り込んでいると思います。

  被害に遭い続けたとされる人物が、犯人の目の前に乗り込むなどあり得ないことだ。

 

 弁:他に気になることは?

 私:Aは、動画撮影前に「ミスって近いとこのってもーた」と友人に送信しています。それなのにAはO駅に着く際に位置を変えていません。

 弁:回避行動を執っていないのですか?

  上記LINEの送信時刻とα電車のO駅到着時刻は重複する。

  そうした状況下でAが回避行動を執らないことは極めて不合理である。

 

 弁:他に気になることは?

 私:この動画を撮影後、まったく被害がなくなっている点です。

  この日以降、Aと私は3回同乗をしている。

 しかし、Aはまったく被害に遭っていない。

 警察が同行警乗を指示し、普段β電車に乗らないはずのAが私と同乗した2日間に、突如「被害」が再発するのである。

 不自然極まりない。

 

 弁:この動画は警察に提出する予定で撮ったと思いますか?

 私:いいえ。

  :母親や友人に被害に遭っていることを示すために撮ったものだと思います。

  動画を撮って周囲に示すことができたため、Aのいう「被害」がなくなったのであろう。

 この推認は、極めて合理的であるといえる。

 この後、突如「6月29日」事件が発生したのである。

 不可解である。

 

 ⑤別人の写真

 弁:9月の事件で、気になることはありますか?

 私:Aが別人の画像を提出して「被害に遭った」と言っていることです。

 弁:Aが、警察に犯人を示して提出した画像のことですね?

 私:はい。

 弁:どのようなことが気になりますか?

 私:Aが画面を差し出した書面上で、犯人を間違うはずがないと思います。

  Aが別人の写真を提出していたことを訴えた。

 重ねて「現認」したとされる警察官がこれを受理したことの不合理を訴えた。

 

 Aの証言の弾劾、それから警察官の「目撃」の弾劾と続き、結局2時間程度の被告人質問となった。

 尋問調書と関係調書を精査すれば、事件の真相は明確になるレベルに仕上げた。

 

 続いて、論告・弁論期日である。

 

 なお、尋問事項の詳細は省略しているため、事件の詳細は過去の記事を参考にされたい。

 

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冤罪弁護士

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  • 作者:今村 核
  • 出版社/メーカー: 旬報社
  • 発売日: 2008/01
  • メディア: 単行本