『冤罪被害者』のブログ 

冤罪被害者の闘いを綴る

033上告趣意書⑤

被害申告そのものの虚偽

 A証言、警察官証言が不合理であること、Aがいう6月29日の「事件」が自作自演であることは、既に述べた。

 そもそもAの被害申告自体、客観事実に整合しない点が多々存在する。

 以下、上告趣意書から一部引用する。

 

本件の全体像(判示第1ないし3に共通する全体像)

A証言、警察官証言による「事件」の経過

 A証言や警察官証言を前提とすれば、本件の経過は以下のとおりとなる(なお、特に記載しない限り年号は平成30年とする)。

(1) 判示第1の事実について

・5月くらいから被害に遭った(A証言調書35頁、以下、「A35頁」等という)。

・いつもα電車で通学しており、α電車以外に乗るのは例外的であった(A63頁)。

・被害に遭ったのはいつも先頭車両である(A36頁)

・5月半ばに最初に両親に相談した(A3、36頁)。

・6月11日、13日に被害に遭った(A6、8、14頁)。

・6月11日に犯人の姿を撮影した(甲27写真①)。

・6月13日に被害の様子を撮影し(甲24)、友人には写真を撮影してもらった(甲27写真②及び③)。

・6月29日、帰宅途中に最寄り駅周辺で後を付けられた(A17、43頁)。

・6月30日、警察に被害申告をした(A50、51、74、75頁)。

・両親が警察に行き、自分は家で寝ていた。

・警察から呼ばれて自分も警察に行った。

・5月から6月30日までの期間に10回以上被害に遭った(A71頁)。

・6月30日以降、警察官の指示に従い通学時間を早めた(A52頁、西口29頁)。

 

(2) 判示第2及び第3の事実について

・8月下旬に、裏付け捜査として、警察官が被告人の行動確認を行った(弁18)。

・5月から9月までの期間に20回程度被害に遭った(A35、38、71頁)。

・9月20日、21日に警察官4名が、現行犯逮捕を目的に同行警乗を行い、2日間合計40分にわたって被告人の行動を注視したが、警察官は、被告人を現行犯逮捕しなかった(西口14、37頁、池田11頁)。

・警察は、Aの供述調書を作成せず、目撃した警察官らの供述調書も作成せず、捜査報告書も作成しなかった。

・9月25日、警察は、判事第1の事実につき、被告人を通常逮捕した。

 

A及びA証言全体の信用性についての控訴審判決の誤り

(1) 客観的事実との矛盾を軽視したことの誤り

・前記のとおり、Aは6月まで10回以上、9月まで20回程度被害に遭ったと証言しているが、関係証拠に照らせば、A証言は、明らかに客観的事実に反するものである。以下、順に論じる。

・まず、Aは証人尋問において、いつも通学で利用し被害に遭ったとするα電車に乗っていない日があることを認め、さらに、被害に遭っていない日をLINE履歴照らして具体的に証言した(A63~71頁)。A証言によって、Aが被害に遭っていない日が具体的に明らかになったのである。

 つぎに、被告人の出勤履歴等を精査すると、Aと被告人がα電車の先頭車両 で同乗する可能性が否定される日が存在することが明らかになった(被告人5回1~16頁)。

・以上の関係証拠を併せる(詳細に とりまとめたものを本書添付資料1に掲載する)と、5月から6月までの期間で、Aと被告人がα電車に同乗し、Aが被害に遭う可能性がある日は、5月10,14,22日 ,6月4日の4日のみである(Aが被害に遭ったと証言する6月11、13日を含めても、被害に遭う可能性があるのは6日である。なお、被告人は先頭車両以外にも乗車することがあると認められるところ(弁18)、前記指摘の4日については、被告人がα電車の先頭車両に乗車していたことは立証されていない)。

 そうすると、6月まで10回以上被害に遭ったというA証言は、明らかに客観的事実に反しており、到底信用できないというべきである。

・これに対し、控訴審判決は「回数については、そもそも弁護人のいうとおりであったかは必ずしも明らかでない上、感覚的なところもあり、・・・、A証言全体の信用性に影響しない」旨判示している(9頁)。

 しかし、前記のとおり、上記弁護人指摘のAが被害に遭っていない日は、AのLINE履歴や被告人の出勤記録等の客観証拠に照らして明らかになったものであり、その信用性は高いものである(なお、弁護人指摘のAが被害に遭う可能性がない日を定める根拠は、A証言[A63~71頁]及び被告人供述[被告人5回1~16頁]が示すところであるが、詳細は前記本書添付資料1を参照されたい)。

 そうすると、「回数については、そもそも弁護人のいうとおりであったかは必ずしも明らかでない」旨の判示は、証拠に基づかない認定であり、不合理であるといわねばならない。

 また、被害回数につき、Aは、「たくさん被害に遭った」などといった曖昧な表現ではなく、「6月までに10回以上及び9月までに20回程度被害に遭った」などと具体的な時期や回数を用いた表現で被害を申告しているのであって、A証言に「感覚的」な所は皆無であるというべきである。

(2) 自己矛盾を不問に付したことの誤り

・Aは、「6月30日の被害申告以降は警察の指示に従い、通学で乗る電車を早めた」旨証言している。従って、6月30日以降、判示第2、3の「事件」の日までは、被害に遭っていないのである。

・しかるに、Aは、9月までに20回程度被害に遭った(要するに7月以降に更に10回被害に遭った)旨証言しているのであって、「6月30日通学で乗る電車を早めた」とするA証言と、「7月以降に更に10回程度被害に遭った」旨のA証言とが自己矛盾している。

 そうすると、Aが、被害に遭うことがあり得ない時期の被害(存在しない被害)を創作し被害を申告していることは明らかであり、A証言は到底信用できないというべきである。

控訴審判決は「回数については、・・・感覚的なところもあり、記憶や表現が適切でないこともあり得るからA証言全体の信用性に影響しない」旨判示している(9頁)。

 しかし、7月以降に被害に遭っていないのにも関わらず、「9月まで20回程度被害に遭った(7月以降に更に10回程度被害に遭った)という証言は、存在しない被害を申告しているのであって、「(Aの証言する被害回数の)記憶や表現が適切でないことがあり得る」などといった判示で到底説明がつくものではないといわねばならない。

 上記A証言の矛盾は、Aが意図的に虚偽の被害を申告したものであるとしか合理的に説明できないのである。

(3) 不誠実な証言態度を不問に付したことの誤り

・Aは、「毎日同じ電車で通学しており、α電車以外に乗るのは例外的であった」旨証言している。しかし、前記のとおり、Aは、半数以上の日においてα電車を利用しておらず明らかに虚偽証言をしている(本書添付資料1)。A証言は信用できないといわねばならない。

・弁護人は、証人尋問において、AのLINE履歴等の客観事実に照らして、Aに対し証言内容の訂正を促したが、Aは自己の証言に固執した(A62~71頁)。このことは、「毎日のように被告人とα電車で同乗し、被告人から被害を受ける機会があった」ことを殊更に創作するAの不誠実な証言態度を如実に示しているのであり、Aは証人として不誠実であり、その証言はとうてい信用できないといわねばならない。

  このようにA証言は客観事実に整合しないどころか、虚偽であることは明白である。それにも関わらず、裁判所はA証言は全体として信用できる旨判示している。

 仮に上記のような点が被告人供述で発見された場合、裁判所は有無を言わず「被告人の供述は信用できない」と判示するだろう。

 

 日本の刑事裁判は公正な機能を果たしていないのである。