『冤罪被害者』のブログ 

冤罪被害者の闘いを綴る

裁判所の事実認定

裁判所の事実認定について

 裁判所は、一審判決が控訴された場合、一審の事実認定に誤認がないか判断しなければならない。もちろん、この判断は《証拠》に基づいて行われるはずである。言うまでもないが、刑事裁判において、何よりも《証拠》が大切なのである。

 しかしながら、実際、高等裁判所は、検察官控訴の場合、検察官の申請した証拠は採用するが、弁護人が申請した証拠は採用しないことが多い。まったく公正と言えないのが実情だ。

 裁判所が早期に弁護側の証拠を採用していれば、無罪判決が下されていた冤罪事件は多い。

 

 さて、先日、最高裁判所は、次のような差し戻し判決を行った。

 この《事件》は、一審が被告人の心神耗弱を認め減刑したところ、検察側が不服として控訴をしたものだ。

 そこで、裁判所は、新たに事実の取り調べもしないで、事もあろうか一審と逆の判断をし一審判決を破棄した。裁判所は、《証拠》もなしに減刑を認めない判決を下したのである。

 要するに、この《事件》は、裁判官の主観のみで、判決がひっくり返されてしまったのである。

 

 以下、最高裁の判決である。

 

令和3年(あ)第1号 窃盗被告事件
令和3年9月7日 第三小法廷判決
主 文
原判決を破棄する。
本件を東京高等裁判所に差し戻す。
理 由
弁護人山本衛,同遠藤直也,同赤木竜太郎の上告趣意のうち,判例違反をいう点
は,事案を異にする判例を引用するものであって,本件に適切でなく,その余は,
憲法違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反,事実誤認の主張であって,刑訴
法405条の上告理由に当たらない。
しかしながら,所論に鑑み,職権をもって調査すると,原判決は,刑訴法411
条1号により破棄を免れない。その理由は,以下のとおりである。
1 本件公訴事実の要旨は,被告人が,スーパーマーケットにおいて,食料品1
0点を窃取したというものである。
第1審判決は,被告人が重症の窃盗症にり患し,その影響により窃盗行為への衝
動を抑える能力が著しく低下していた疑いがあり,行動制御能力が著しく減退して
いた合理的疑いが残るから,被告人は,本件犯行時,心神耗弱の状態にあったとし
て,被告人を懲役4月に処した。
2 検察官は,第1審判決に対して控訴を申し立て,事実誤認を主張した。
原判決は,被告人が,本件犯行時,窃盗症にり患していたとしても,犯行状況か
らは自己の行動を相当程度制御する能力を保持していたといえるのであり,行動制
御能力が著しく減退してはいなかったといえるから,被告人には完全責任能力が認
められ,重症の窃盗症により心神耗弱の状態にあったとした第1審判決の認定は論
理則,経験則等に照らして不合理であるとして,事実誤認を理由に第1審判決を破
棄し,原審において何ら事実の取調べをすることなく,完全責任能力を認め,被告
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人を懲役10月に処した。
3 しかしながら,このように,被告人は行動制御能力が著しく減退していた合
理的疑いが残るから心神耗弱の状態にあったとした第1審判決について,その認定
は論理則,経験則等に照らして不合理であるとして,事実誤認を理由に破棄し,原
審において何ら事実の取調べをすることなく,訴訟記録及び第1審裁判所において
取り調べた証拠のみによって,直ちに完全責任能力を認めて自判をした原判決は,
刑訴法400条ただし書に違反するというべきである最高裁昭和26年(あ)第
2436号同31年7月18日大法廷判決・刑集10巻7号1147頁,最高裁昭
和28年(あ)第2891号同31年12月14日第二小法廷判決・刑集10巻1
2号1655頁,最高裁昭和30年(あ)第2244号同32年6月21日第二小
法廷判決・刑集11巻6号1721頁,最高裁昭和41年(あ)第1172号同年
12月22日第一小法廷判決・刑集20巻10号1233頁参照)。この違法が判
決に影響を及ぼすことは明らかであって,原判決を破棄しなければ著しく正義に反
するものと認められる。
よって,刑訴法411条1号により原判決を破棄し,同法413条本文に従い,
本件を東京高等裁判所に差し戻すこととし,裁判官全員一致の意見で,主文のとお
り判決する。
検察官平光信隆 公判出席
(裁判長裁判官 長嶺安政 裁判官 戸倉三郎 裁判官 宇賀克也 裁判官
林 道晴)

 日本の司法は、裁判官の《主観》による事実認定がなされている。
 これは先進国の司法としてはあり得ない現状である。
 
 今回は、たまたま最高裁がそれを糺したが、見過ごされているケースは非常に多い。
 
 日本の司法の実情をしっていただくために記させていただいた。